【中編】ライト層にこそ、ソーシャルメディア活用が適している。レピュコム・ジャパン代表取締役・秦英之

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――今、サッカーに限って言うと、ソーシャルメディアを一番うまく使えているスポーツチームはどこだとお考えですか?僕は以前、マンチェスター・シティを調べたことがありましたが、あのチームも非常にうまく活用していますね。

秦 今はプレミアリーグと、ラ・リーガの2クラブ(FCバルセロナ、レアル・マドリード)だと思います。彼らは完全に、ソーシャルメディアに最適化できています。ブンデスリーガもそうですが、自分たちのデータベースを広げる手段として、より多くのファンに触れてもらおうとしています。例えば試合前の映像、ベンチ裏の映像、さらにオフの映像。これを一週間の物語、もっというとシーズンの物語として、メディア展開をしています。

――僕は今バルサのLINEもフォローしていますけど、おそらくそこでしか得られないであろう写真をたくさん使っていますよね。

秦 おそらく、プラットフォームの年代別でも(発信内容を)分けていますね。Facebook向け、LINE向け、twitter向け。媒体特性をしっかり把握して、展開しています。プラットフォームを理解し、その先にいるファンを理解し、多面化している。優秀なクラブほどそういうことをしっかりやっています。

――僕はJリーグがもっともっと盛り上がって欲しいと思っています。規模が違いすぎるんですけど、もっとうまく使える余地はありそうですよね。

秦 そうですね、要は母数の法則です。どうやって母数を上げるかということで、私はアジア戦略は決して間違っていないと思います。母数を広げるために日本という枠を一回外して、行ったことないところにパイプを広げていく。その方向性は間違っていないわけです。ただ課題としては、アジアに出ていく以上「これは日本最高の商品だ」という部分をいかに見せられるかが重要です。アジアを攻めるならそういう仕組みをどう作っていくか。選手を呼ぶのなら、本気になって育成する仕組みをどこまで作れるか。

マンチェスターの2クラブがなぜこれだけ世界展開しているかといったら、ちゃんとしたツアーを組んで、商品価値を常に維持しているからです。一時期セレッソ大阪には香川真司がいて、一昨年はフォルランが来てわーっとなりました。けど、一過性で終わらせず地道な仕組みを作れるかがすごく重要です。ソーシャルメディアの強みは、ユニフォームが当たる当たらないは別にして、ワクワク感が無限大にあるわけですよね。どこまでこだわって作れるかがすごく重要です。商品価値の徹底ですね。

これは余談ですけど、高校選手権をいつも盛り上げるのはいいんですけど、高円宮杯も質の高いサッカーをしているわけではないですか。だったら、こっちをもっと盛り上げないともったいない。ACLもそうで、「あれは別物、どうせ勝てない」ではなくて、勝てる仕組みをどう作っていくか。負けてもファンを引きつける仕組みを作れるか。なぜ甲子園が発展したかというと、「高校年代のトップ選手が集まって、ガチンコでやる」からですよね。

――サッカーにあまり興味のない人でも高校選手権は知っている一方、高円宮杯はほとんど知られていません。

秦 そこをしっかり、どう本気になって伝えていくか。Jリーガーを目指す息子を持つ立場としても、すごく感じます。「Jリーグの価値を過小評価しているんじゃないか?」「どれだけJリーガーになることが大変なのか、なんでもっともっと打ち出さないんだ?」とも。凡人からJリーガーになるのがどれだけ大変か、伝え方が弱いと思うんですね。

――最近、リトアニア2部でプレーしている選手と話すのですが、曰く「Jの選手は神ですよ」と。Jリーガーになる時点で全サッカー選手の上澄み1%以下なわけで、とんでもないエリートなわけです。彼にこの間、長谷川太郎さんというJ2日本人得点王になった方をつないだんですけど、会った時に相当に緊張していて。「そんなに緊張するものなの?」と聞いたら「澤山さん、そんなに緊張することですよ!」と(笑)。でも、一般に「J2の日本人得点王」といっても、すごさにピンと来る人は少ないと思います。

秦 そうですね。すごくもったいないのは、チャンピオンシップにしても、すでに決まっていることに対し否定論を語るより、どうやってよくしていくかを展開していきたいですね。Jリーグ・マーケティング委員会でも言っているんですけど、チャンピオンシップはJリーグ最大のイベントです。どうみんなを引きずり込むか、その仕組みを作るか。みんなの財産だから、より良くしていこうという考え方が大事です。

余談ですけど、P&Gさんが選手のお母さんを応援する企画をロンドン五輪でやったんですけど、すごくハートを打つものでしたね。P&Gは大量の消費財をお母さん方に売っている会社です、洗剤とかいろんなファブリックを。キャンペーンとして、われわれは世界中のアスリートのお母さんを応援しますという映像を作った。子どもがアスリートになるまでお母さんが応援する姿、最後にメダルをとった瞬間の姿を30秒間で伝えるわけです。

Jリーグでも、こうした企画はできないものかなと思います。企業がサポーターを応援しています、という姿勢を打ち出す何か。企業側も然りで、スポーツを扱っている以上しっかりとしたイロハを理解していただいて、「スポーツというものを最大活用しましょう」という本気を見せる時代が来たんじゃないかなと思いますね。

明治安田生命さんは、そこがある企業です。“やってやろうぜ!”という姿勢が。対価を払っている訳ですから、ギブ・アンド・テイクを成立させる。サポーター心理となんら変わらないはずなんです。この方向性をスポンサーの視点からもしっかりと引き出せるかどうか、それが次のステップに繋がるのではないかなと。

<続く>

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