エディー・ジョーンズは、いかなる観念的な議論にも与しない。書評:『ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話』 @500zoo

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

■1)時間・エリア・彼我のプレー傾向を判断し、戦略的に戦うこと

相手ペナルティで得たキックを、相手陣22メートルライン手前に蹴り出し、好エリア・好位置でラインアウトを獲得。ここがエリア・位置ともに好ましいというのは、ゴールラインに対して適切な深み・横幅を得ることができ、ラインアウトからのランアタックによるデザインプレー(サインプレー)一発でトライを取れるため。そして、日本代表はこの時間帯にこの位置でこの好機を得たときのために、トライを取るためのデザインプレーを準備し、取っておいた。非常に冷静に、戦略的に戦った。

■2)日本代表の特徴である技術・スピード・緻密さを活かすこと

できるだけ幅を取りつつ、スピードアップしながら相手のDFラインに接近し、相手が前に詰めてくるよう仕向ける。そこで数的優位が作れるよう準備しておき、正確なパスプレーを繰り出してラインブレイクする。その後は、あらかじめ取っておいた幅を利用して外側でフリーランナーを作り、トライを得る。最初の日和佐のパスアウトからインサイドセンター+アウトサイドセンター+ブラインドのウィングのグループでのパス交換から松島のブレイクにいたるまで、スピードとプレッシャー、狭いスペースの中で非常に正確な技術を発揮し、トライに結びつけた。

■3)上記の要素を試合の最終盤まで活かすため、列強と互すフィジカルとフィットネスを得ること

このトライが残り時間10分となる後半70分台に実現したことが重要な点。ラグビーはフルコンタクトのスポーツな為、フィジカル的に劣勢にあると個々の局面で著しく不利となるだけでなく、ゲーム時間の経過ともにコンタクトのダメージが蓄積し、終盤でフィットネス不足に陥ったり、判断力を減退させたりしてしまう。日本代表が残り10分の段階でこれほど戦略的にも技術的にも正確な、高い判断力に基づいたスピーディなプレーをできたのは、相手と互角以上に渡り合えるフィジカルを得ていたからこそ。相手がフィジカル面ではオールブラックスと並んで世界トップといえる南アフリカであることも、その価値を高めている。

この3つに「世界標準の戦術を実装する」を加えた4要素が、エディー・ジョーンズが日本代表にもたらしたものだといえます。重要なのは、(サッカー、ラグビー問わずこのような大きな大会の後、日本国内でしばしば巻き起こるような)「自分たちらしさ」対「勝利のために必要となる普遍性」、「テクニック」対「フィジカル」といった対立項の設定による議論とは遠い地点で、チーム設計を行っているという点です。

1 2 3 4
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

IMG_6967

東京五輪へ日本人選手を! 日本企業がマケドニアのチームを買収したワケ #daihyo #jleague #gamba  

2015.12.08

8日、東京都内にて興味深い記者会見が行なわれた。エムコンサルティンググループ株式会社(東京都港区)による、マケドニア1部リーグ・FKラボトニツキの買収お...

2176878416_7334be3357_o.00_00_00_01.Still026

【前編】 MLS・20年目の結実、その理由に迫る/中村武彦(MLSアジア戦略コンサルタント)

2015.11.12

発足20年目を迎えたアメリカのメジャーリーグサッカー(Major League Soccer、以下MLS)が活況だ。1996年に10クラブで発足したML...

koyano4

【後編】“こやのん”が語るクラブ経営の難しさとやりがい。小谷野薫(サンフレッチェ広島前社長)#sanfrecce

2015.11.14

――クラブマネジメント全般について伺いますが、やはり地方クラブには特有のやりがいや難しさがあったと思います。具体的には、どのような部分でしょうか。 ...

master

【後編】MLS・20年目の結実、その理由に迫る/中村武彦(MLSアジア戦略コンサルタント)

2015.11.14

  ――アメリカでは、選手のセカンドキャリアという言葉が存在しないんですね? 中村 存在しないとは言いませんが、そこまで大きく取り...

koyano1

【前編】“こやのん”が語るクラブ経営の難しさとやりがい。 小谷野薫(サンフレッチェ広島前社長)#sanfrecce

2015.11.14

  今年4月に行なわれた広島市長選に、J1・サンフレッチェ広島の社長という立場を結果的にせよ捨てて出馬した小谷野薫氏(現・株式会社エディ...