エディー・ジョーンズは、いかなる観念的な議論にも与しない。書評:『ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話』 @500zoo

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このトライシーンには、上述したとおり「勝利のために必要な普遍性」=戦略性、「自分たちらしさ」=技術とスピード、「フィジカル・フィットネス」=南アとすら互せるそれ、と全てが揃っています。そのいずれかではなく、全てが高次元で(ワールドカップで世界トップの強豪と互せるレベルで)まとまっているのです。このトライシーンを観れば、エディーの日本代表が、それぞれの要素を排他的な関係と捉えるのではなく、分かちがたく連関し相互に作用する要素として認識し、全てを向上させながら練り上げられてきたことが、よくわかります。

本書「ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話」は、エディーの日本代表のプレー内容を具体的に読み解くものではありません。しかし、エディーがなぜそのようなチームビルディングを行ったのか/可能だったのか、ということが腑に落ちる好インタビューです。

著者の生島氏も指摘しているとおり、鍵となるのは、本書中至る所に登場する「コーチングはアートである」というエディーの信条。ここでいう「アート」とは、無数の選択肢の中から、様々な要素を選び取り組み合わせながら、目的とする効果=普遍的な結果(作品であれば受け手の感動、スポーツであれば勝利)に結びつけていくやり方、という程の意味でしょう。

本書中でエディーが示す「様々な要素」は、多岐にわたります。

自らが預かったチームの、日々変動するグループとしての状態。選手個々のフィジカル・メンタル各コンディション。現代ラグビーの実相を表す各種データや、選手個々のスタッツといった「サイエンス」。歴史の要素も欠かせません。戦術史。あらゆるラグビーネイションの歴史、ビジネスとしてのラグビー史。はては、ヨーロッパフットボールやNFL、オージーボールなど他のメジャースポーツの戦術史やコーチングアートの現在、それぞれのビジネスモデルにまで、エディーの食指は伸ばされています。めまいがするほどの多彩さ、膨大な情報量です。

これらの中でチーム&マンマネージメント要素と共にエディが特に重要視しているのが、科学的に実証可能な客観的なデータという意味での「サイエンス」です。

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