【後編】なぜ、スポンサーシップは「コストセンター」とみなされてしまうのか? レピュコム・ジャパン代表取締役・秦英之

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秦 ちょっと古い話なんですが、2013-14シーズンのプレミアリーグを制覇したマンチェスター・シティ、彼らがどういう営業でどういうデータをどう武装して売り込んでいったかをお話します。彼らは世界中のフットボール人気がどれくらいか、全世界にデータベースで持っています。「フットボールは、世界でダントツで人気があります。2009年、10年、11年と、W杯の年でもちゃんとフットボールの人気は維持されています」と。さらにプレミアリーグがどの国でどれくらい人気があり、どう変動しているか、すべてデータで持っています。各大陸での変動実数も持っています。

イギリスにおける各スポーツ大会、あるいはW杯、CL、ユーロの次にちゃんと維持しています、というのを数字で持っているわけですね。優勝する前後でどういう変動があるか、どの地域でどう伸びたか。インドネシアでは有料放送から無料放送に変わったので一気に伸びたのですが、その裏付けとなるデータも保有しています。世界中のファンがどれだけいるか、実数となるデータを持っています。

――当然なのかもしれませんが、非常に豊富なデータを保持しているんですね。

秦 あとはメディアの価値。胸スポンサーの価値が前年比でどう変動したか、各クラブごとのデータを持ち、どの大陸でどれくらい伸びたか、サッカー以外の競技と比べてどうか……様々な数字を持って、世界中を歩いています。データ武装=スポンサーに対する説得材なんです。日本でも、弊社のシステムが導入される前は「Jリーグってどれくらい価値があるんですか」と言われたら「うーんと……野球に次いで2番目です。アジア放送を始めました」というところで止まっていました。社会貢献の部分も大事ですけど、今は具体的にピッチ看板の価値がいくらか、その理由は何か、という部分が非常に大事です。

日本でもようやく数字の導入を図り、電通もグローバル企業として入りました。電通はいろいろ言われますけど、私がリスペクトしているのは「タイトルスポンサー」というアイデアを、Jリーグと一緒に考えたことです。数値化するために我々を使って、みんながWinWinになっていく構図を作った。これが「スポーツ産業を広げていく」ということなんです。

もちろん細かいテクニックもありますよ。例えばマンチェスターは訪問先企業に行く際、例えばSONYに行く際にはSONYのロゴを胸に入れたユニフォームを予め作ります。背中には役員の名前を全部調べ、個々に刻んだものを額縁に入れ、びしっと送る。そして、売り込んだ直後にそのゴールドボックスが彼らの元に届くんです。

――それは欲しくなりますよね。

秦 何しろ数十億円の買い物ですから、それくらいのもてなしはするわけですよ。そこは徹底していますね。芸能界も一緒です。ジャニーズは何がすごいかと言ったら、コンサートに行ったら誰もが楽しめることです。さらに数的根拠もちゃんと抑えていて、売上になります、ファンと繋がります、視聴率も取れます。そこを、自信を持って裏付けを言えるわけですね。

――そのお話は我が意を得たり、というところがあります。Jリーグはそれこそ今成功しているジャニーズやAKB、エグザイルといった分野を徹底的に調べて、予算やリソース上の制約を踏まえ模倣できる部分は徹底的に真似すべきだと思います。あれだけ大勢の人の心をつかんでいるということは、やはり何がしか楽しいわけですよね。楽しんで、数千円~1万円単位のお金を払わせる仕組みがあると。

秦 それでいうと、2014年シーズンに流行した『セレ女』がなぜできたか。大きな要因は、2つあります。1つは、育成がしっかりしていたこと。香川真司、乾貴士、清武弘嗣、柿谷曜一朗、山口蛍……こうした選手たちを定期的に輩出できているというのが1つ。結果、スター性のある選手が出てきて、マスメディアに乗せても映える。もう1つは、ヤンマーというスポンサー企業が「セレッソのブランド価値が上がってきて、さらなるスパイスとしてディエゴ・フォルランというスターを獲得しよう!」と投資をした。それで、ブームが起こったわけです。一方、収束した背景にはいろいろな要素がありますが、ブームが起きたこと自体は「なぜ起きたのか」をきちんと分析して可視化することが重要です。

――模倣できるところは模様し、改善できるところは改善すべきだと

秦 そこですよね。なので、そこがすごく重要なポイントになるかなと。ただ、なぜスポンサーシップの考え方が企業にあまり浸透しないかというと、その背景には企業がスポンサーシップ部門をコストセンター(コストは集計されるものの利益は集計されない部門のこと)だと考えているところにあります。営業部門じゃないわけです。広告宣伝部というのは、コストセンターなわけです。

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