「青山敏弘が12.9km走った」は有用なデータか? だから何、と言われないためのデータ活用術。#sanfrecce #jleague

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■スポーツのデータ革命

これからのスポーツ、その新しい形を考えたときに、絶対に外せないのが、データの活用です。米大リーグMLBの『マネー・ボール』から火がついた“スポーツのデータ革命”はアメリカンフットボールNFL、バスケットボールのNBA、アイスホッケーのNHL、いわゆる北米4大スポーツへの波及を経て、2014年のサッカー・ブラジルW杯でのドイツ代表の優勝という成功など、世界中のありとあらゆるスポーツに大きな変化をもたらしています。

2010年代に入り、ビジネスの世界でも重要なキーワードになったビッグデータ。データを蓄積するハードウェア(主に容量当たりの単価が引き下げられ膨大なデータをストックできるようになった)、それを高速に処理するハード、ソフトウェア、そしてデータをやりとりするブロードバンドインフラ……。データ分析に必要な環境がすべて整ったことでビジネスでも、実社会でも、そしてスポーツでも「データを用いてできること」が、爆発的に増加しました。人類は現在起きている事象をデータによって可視化したり、定量化、比較したりすることができるようになったのです。

積み上げられる大量のデータ。ではそれを使ってどうするか?

ビジネスシーンでのビッグデータ活用の際にもよく言われることですが、データは収集したまま、ただ数字としてそこにあるだけでは何の価値も持ちません。それを分析して、目的に沿った加工を行い、現場や実行者に伝達することで行動や結果につながってはじめて意味を持ちます。スポーツのデータ利用に懐疑的な人たちが「試合のスタッツから得られた数字にどれほどの意味があるのか?」「結果論じゃないの?」「サッカーの試合で走行距離がわかったから何?」と思っているのもあながち間違いではありません。

■だから何? からの脱却

先日、オランダの名門サッカークラブ、アヤックスのアナリスト・白井裕之さんにお会いする機会がありました。白井さんは欧州の現場で活躍するサッカー分析のスペシャリストですが「1試合で得られる電話帳数冊ほどのデータのなかで“サッカーに必要なデータ”はほんの数枚」だと言います。

14-15シーズンのチャンピオンズリーグ決勝では、
36歳のピルロが一番長い距離を走っていた

その距離は11.75㎞で2位のジョルディ・アルバが11.61km、マルキージオ11.47km・・・・・・。中盤の底から攻撃のスイッチを入れるパスを配球するピルロがこれだけ走っているという事実は、サッカーを“観る人”には有益で興味深い情報です。しかしここ10年、サッカー選手の走行距離がほとんど10km~12kmで推移しているなかで、この数字だけを取り出してみてもサッカーのパフォーマンスや戦術に何か新しいインパクトを示すことはないのです。

ドイツ代表のW杯優勝にデータ面で貢献したSAPもスポーツ参入の最初の動機は「ファン・エンゲージメント(約束や愛着心を意味する。ファンサービスよりも結びつき度合いが強いニュアンスがある)」だと言い切っています。SAPでは米ナショナルプロバスケットボールリーグ(NBA)のありとあらゆるデータをファン向けに公開し、プラチナチケット化した現地観戦の機会を持てないファン(アリーナに行けない人が90%超えると言われている)に「テクノロジーを介したスポーツ体験」を提供しており、これが会社のメイン事業としてスポーツ&エンターテインメントに進出した最初の例だと言います。つまり、SAPにおける、スポーツデータ事業の最初の一歩は、「ファンが見て楽しいデータ」を提供することだったのです。

日本ではこの「ファン・エンゲージメントのデータ」と」「強化に使われる本当の意味で分析されたデータ」が一緒くたにされており、スポーツの現場でも正しい理解が定着しているとは言い難い状況です。現場で長年言われてきたことの実証や起きたことの事後分析、つまりデータ利用がスポーツのプレー現象の後追い、検証に留まっているケースが見られ、多くの場合それは、現場でしのぎを削る監督、コーチ、選手たちから「だから何?」と言われてしまうような活用しかされていないことも少なくありません。

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