目を疑うほど、お粗末な会議体。広島にサッカースタジアムが建設されないのはなぜなのか?【後編】 #sanfrecce #jleague

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■異例づくしの会議体

まず、この会議体は事務局を県サッカー協会が担当することになったのですが、この事務局に県・市の自治体は参加しませんでした。この手の協議会では異例のことです。「私たちはいざとなったら知らないよ」と宣言しているようなものです。

そしてマンパワーのきわめて少ない県サッカー協会が事務局を担当することで、この会議体については、信じられないことに、公的な議事録がほとんど残っていません。誰が何を協議したかの記録が残っていないのです。このやり方に大変な危惧を抱いた有志の方が、その後ほぼ全ての回の会議を都合をつけて傍聴し、テープ起こしをして非公式ながらかなりの精度の議事録を作成してくださいました。しかし公的な協議組織といってもこのような状態でしたので、その委員の中にはかなり見識を疑われるような発言があり、議事も紛糾していきます。

最初の段階で特に紛糾したのはどの程度の大きさのスタジアムを想定するのか、という、キャパシティの問題でした。建設候補地を中央公園自由広場・芝生広場、旧広島市民球場跡地、広島みなと公園、広島西飛行場跡地に絞り、そこでどのようなスタジアムが実現できるか、事務局が依頼したコンサルティング会社が想定の対象として提示してきたのは2万のスタジアムの例としての仙台ユアテックスタジアムと、4万のスタジアムの例としての鹿島スタジアム。県サッカー協会とサンフレッチェ広島に経営上の適正キャパシティを確認することもなく、新スタジアムの想定に近しい3万という数字をわざと外したような想定をいきなり提示してきた座長側に対して、議論は紛糾します。

代表チームの試合やワールドカップを見据えた4万のキャパシティを必要とするのか、それともクラブ経営を見据えた2~3万のキャパシティとするのか、これは現実を冷静に数値化し、イニシャルコスト、ランニングコスト、観客動員想定などデータを用いて定量的な議論をすべきところなのに、一部委員は「国際試合を誘致するためには3万以上がマスト」というちゃぶ台をひっくり返すような根拠の薄い意見を連発し、実のある議論が難しい状況になっていきます。

さらに現スタジアムの立地の致命的な問題もあって新スタジアム検討の論議になっているにも関わらず、何度も現スタジアムの改修を比較検討の一つに加えることを譲らない委員など、それぞれの思惑に引きずられ、とにかく回を重ねても議論は停滞し、どうやって作るか、という具体的な議論まで到達しない小田原評定が二年近く続きました。

最終的に候補地は「旧広島市民球場跡地」と「広島みなと公園(宇品)」の2エリアまでには絞られましたが、そこでのコスト比較検討についても不適切・不公平な条件設定がなされていると一部委員から批判がでるような検討結果にまた紛糾し、結局座長判断で上記2案を併記で県と市に答申するという玉虫色決着で、建設コスト調達方法検討までの論議にも至らず、終了してしまいました。

■現候補地のメリットとデメリット

これを受けて、県と市は財界(商工会議所)と県サッカー協会とで最終的な絞り込みを行うとしましたが、県サッカー協会は「使用者側としては候補地選定の議論に参加できない」というよくわからない理由で一時離脱し、今後、県と市と財界で球場跡地と宇品の2エリアにおいて実現にむけての問題点の整理をしていく、という段階となっています。

候補地となっている二つの場所、それぞれにメリット・デメリットがあります。簡単にまとめると

●球場跡地

<メリット>
1)市の中心部で交通インフラに優れている
2)大きな既存商業エリアに近接し相乗効果を得られる
3)原爆ドームの正面に立地し、スポーツを通じて平和をアピールするというコンセプトが明確に打ち出せる

<デメリット>
1)面積範囲が限られている上に法令的な高さ制限もあるため、収容人員に制限がでる
2)都市公園法の適用範囲となり、店舗の併設など用途の汎用性に制限がでる
3)市の中心部の為、他の用途での活用の希望もあり調整が必要。特に跡地委員会の答申を受けて市が出した「緑地広場+文化施設」との比較で採否が判断されることになる。

●宇品みなと公園

<メリット>
1)面積的な余裕があり、様々な用途との複合化、大型化のポテンシャルがある
2)「港湾地区の活性化」の起爆剤という理由がつけやすい
3)土地は県の持ち物であり、県と市の負担の分散が事業としてやりやすくなる

<デメリット>
1)公共交通機関や道路状況としてのインフラが弱く、試合時の混乱が予想される
2)近隣の港湾業者が交通渋滞リスクなどに対し強い誘致反対の意思を示しており、調整の難航が予想される
3)国の指定する防災公園として補助金を受けて防災施設を整備しているため、スタジアムを誘致するには防災施設の移転か補助金の返還等が必要

というような項目が上がります。今後それらのメリット・デメリットを整理し、方向性を絞り込んでいくことになります。ただその絞り込みについては、二つの懸念点があると考えられます。

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