目を疑うほど、お粗末な会議体。広島にサッカースタジアムが建設されないのはなぜなのか?【後編】 #sanfrecce #jleague

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■自治体の本気度を疑わざるを得ない

一つ目は、いまだにそのキャパシティ、収容人員についての明確なターゲットが、コンセンサス的に絞り込めていないということです。「代表の試合や国際試合の誘致を考えると大きくしたほうがいいに決まっている」ということで3万以上、4万まで見据えた大型化を考えるのか、それとも「代表戦や大きなキャパシティが必要とされるような国際試合など、何年に1回開催されるのか、それを考えたらメインで使うクラブの経営上最適化された規模を目指すべき」ということで2.5~2.7万くらいをターゲットに考えるか。そのコンセプトが未だに不明確なままなのです。これについては、まだ行政もはっきりとした判断は下せていません。

そして二つ目は建設資金のスキームの話に全く踏み込めていないことです。「候補地が決まっていないから」という言い訳も聞こえてきますが、少なくとも2カ所に絞られてきていますし、それぞれの資金スキーム、運営していく場合の収支バランスなどをパターン分析していかなければ、いつまでも計画は具体化しません。

またコスト的なコンセプトをしっかり明快に作るのであれば、吹田スタジアムのような超ローコストでありながらつぼをおさえた設計も可能という好事例も存在することを考えると、敷地選定と並行でこのコストスキームの検討も急がなければいけません。しかしそのような様子も全く見えてこないところからも、県や市など自治体の本気度を疑わざるを得ないというのが現状なのです。

広島のサッカースタジアムの本気度ということを考えると、前広島市長の秋葉氏は2期目の市長選挙戦の中で市内中心部へのサッカースタジアム建設を訴えましたが、2期当選するとその後財政緊縮化の中で「あれはただの応援メッセージだった」とその言を簡単に反故にしました。

現市長の松井氏は2012年には「サッカースタジアムを要望するなら少なくとも3回優勝してください(参照)」とスピーチし、波紋を広げただけでなく、2013年のリーグ2連覇の直前、チームが最終盤で死闘を繰り広げているなかで、「サンフレッチェが優勝すると3回優勝という目標にまた一歩近づくことで自分へのスタジアム建設の圧力が高まることを懸念」したことから、あろうことか「サンフレッチェ広島は2位でいい」と失言し、各方面から大きな批判を受けました。

広島県知事は前職も現職もサッカースタジアムに関しては「市の仕事ですよね」とほとんど言及することはなく、2連覇の時にも現職県知事は市長に話題を振るだけで、主体的な発言はほとんどありません。サンフレッチェ広島の強さとは裏腹に、行政の本気度は全く見えてこないのです。

就任から4年の中で(シーズン優勝を含めると)3度の優勝という実績を残し、どこからも「名将」とうたわれるようになった森保監督は、サンフレッチェ広島のJリーグ発足前からの生え抜きであり、このような今西GM時代から、前社長の市長選落選も含めた、サッカースタジアムの検討の歴史、長く険しい道のりを熟知しています。また一時期仙台に在籍していたことから仙台のサッカー/ラグビー/アメリカンフットボール専用公式競技場であるユアテックスタジアムのすばらしさ、そしてそのスタジアムが街に及ぼす好影響も目の当たりにされています。

このことから森保監督は就任当初から、市内中心部へのサッカースタジアム要望の発言を憚りません。今回の優勝の弁でも最後はかならずこの市内中心部へのサッカースタジアムについてしっかりと発言されておられました。これやエディオンスタジアムに張り出された冒頭の横断幕について、政治的なメッセージと揶揄し、敬遠する意見も多数散見されました。そのご意見、至極もっともな話だとは思いますが、この歴史の中で、市内中心部へのサッカースタジアムの要望は、政治的なスタンスを飛び越えて、すでにサンフレッチェのファンたちの「夢」になっているのです。

これから始まる大一番、チャンピオンシップの結果がどう出るかは解りませんが、少なくともサンフレッチェがサッカーの世界では、最低限でも3回の優勝に準じる結果を残し、サッカースタジアムの新設にふさわしいクラブになったということは間違いのない事実であると思います。今、このサンフレッチェのクラブの監督・選手・スタッフの努力に報いる形で声を上げることができるとすれば、候補地がどうこうとかそういう些細なことではなく「自治体・財界を含め、プロジェクトの推進をすべき人たちの『本気』を見せてほしい!」ということだと思います。そしてそういう声を上げる「時は来た」ということを、強く訴えさせていただいければと思います。

ALL FOR HIROSHIMA またろ(@mataroviola)

<了>

>>広島にサッカースタジアムが建設されないのは、なぜなのか? 苦闘の歴史を詳細に振り返る【前編】>>

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