エンタメが企業と組むのは不純なのか? 特筆すべきレッドブルの試み。レジー @regista13 の「スポーツサイトで音楽の話をしよう」

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■レッドブルの「RBMA」

オーストリアに本拠地を置くレッドブル社は、言わずと知れたエナジードリンク「レッドブル」を販売する企業です(以下、飲料を「レッドブル」、企業を「レッドブル社」と記載)。この会社は、マーケティング活動の一環として多くのスポーツにお金を出していることで有名です。お膝元のサッカークラブであるレッドブル・ザルツブルク(サッカー日本代表の南野拓実が所属しています)を筆頭に、モータースポーツやエクストリームスポーツなどにも積極的に投資しています。

レッドブル社が面白いのは、業務内容を「飲料の販売」ではなく「レッドブルブランドの活用」と設定していることです。「翼を授ける」という広告コピーは広く知られていますが、自身のブランドを「新しい文化の象徴」「(翼を授かったような)自由の象徴」として浸透させること自体が企業としてのやるべきことであり、その結果としてレッドブルが売れる、というような主従関係を志向していると言えるかと思います。

この思想の下、レッドブル社は売上の3分の1を広告とブランド育成に充てるという方策をとっています。先ほど触れたような多様なスポーツとの関わりもその一環ですが、音楽というフィールドもレッドブルブランドの育成のための重要な場となっています。

レッドブルの音楽との結びつきにおいて象徴的なのが、「Red Bull Music Academy(以下RBMA)」というイベントです。公式サイトの紹介文を引用します。

レッドブル・ミュージック・アカデミーは、世界を巡る音楽ワークショップとフェスティバルのシリーズ。現在の音楽のあり方を変えていく人々のためのプラットフォームです。

世界各地から選ばれたプロデューサー、ヴォーカリスト、DJ、楽器の演奏家など、独自に音楽を追究する30名の参加者から成る2組のグループが、毎年新しい都市において各2週間開催される音楽学校に参加します。内容にはレコーディング・セッション、著名な音楽関係者によるレクチャー、コラボレーション、そしてその街で最高峰のクラブやコンサート会場でのパフォーマンスが含まれます。それは、科学研究室とバビロンの空中庭園とKraftwerkのプライベート・スタジオを足して3つで割ったような場所を想像してもらえば、きっとかなり近いでしょう。

RBMAが始まったのは1998年で、2014年には東京でも開催されました(アジア圏初)。東京でのRBMAでは、細野晴臣や冨田勲といった日本の音楽界の重鎮が登壇するセッションから、カラオケ館をジャックして各部屋でパフォーマンスされる「日本の音」をネット配信する「Lost in Karaoke」といった尖った企画まで、売れ線のミュージシャンを担ぎ出すのではなく「日本の音楽文化の底上げ」につながるような取り組みが多数行なわれました。さらに、RBMA終了後もイベントの模様の動画がサイトで閲覧可能であり、しかもRBMAのために作られたプロ仕様のスタジオは「レッドブル・スタジオ」として現在は無償で利用することができる(※「音楽に情熱を持ったアーティストやレッドブルとパートナー関係にあるアーティストが無償で使用できる」とのこと)、という太っ腹ぶりです。

「Lost in Karaoke」に出演していたtofubeatsは、イベント後にこうツイートしていました。

アイロニカルな匂いの漂う表現ですが、このツイートにはRBMAの立ち位置が的確に描写されています。「音楽をやるドメスティックな機関」は音楽を売って自らの食い扶持を稼がなくてはならないので、短期的な売り上げには結びつかないであろうこのようなイベントを作り上げるのはなかなか困難です。一方、レッドブル社は「これはあくまでも投資の一環」「中長期的に見て、『自由』『先鋭的』といったブランド価値の向上、およびそこから生まれるレッドブルの売り上げ(=リターン)につながればOK」という発想だからこそ音源のプロモーションとは異なる考え方で魅力的なイベントを組み立てることができるわけです。「音楽業界の部外者」が「自身のブランド価値向上」のために「音楽というエンターテイメントを利用している」からこそ、RBMAというイベントが成立している と言えます。

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