エンタメが企業と組むのは不純なのか? 特筆すべきレッドブルの試み。レジー @regista13 の「スポーツサイトで音楽の話をしよう」

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■パートナーはどこにいるのか

RBMAのような「企業がブランド価値向上のために音楽にお金を投じ、それによってイノベーティブな表現が生まれる」という取り組みには、個人的には大きな可能性を感じます。既存の業界システムが未来の才能や革新的な表現を自力で育成するのが難しいのであれば、パートナーを見つけてくればいいのです。

「企業からお金をもらうなんて、作品やアーティストの独立性が・・・」なんて声も聞こえてきそうです。そのパートナーとの組み方次第では不幸な事態が引き起こされてしまうこともあるかもしれませんが、音楽そのものに魅力があれば最終的に残っていくのは作品名でありアーティスト名です。そのあたりについては、DREAMS COME TRUEの中村正人がとてもわかりやすく言語化しているので、少し長いですが引用します。(http://www.oricon.co.jp/news/2062289/full/

中村 そもそも複製権ビジネスが成り立つようになったのは、音楽の歴史のなかではつい最近のことです。ベートーベン以前はどんな偉大な作曲家にもパトロンがいて、彼らが音楽を作らせていた。一方で民衆のためにオペラなども書かれていたけれど、それはさほど儲かるものではなく、基本的にはパトロンのお金で食べていたわけです。今後も音楽を作り続けるためには、そういう発想への回帰も必要だと強く意識しています。

――具体的には?

中村 一つには、企業と組むということでしょうね。

――ドリカムは今年も九州新幹線のキャンペーンソング「九州をどこまでも」を提供していますが、それは純粋なドリカムの作品ではないということになりませんか。

中村 我々は昔から、たくさんの作品をドラマやCMのために書き下ろしてきました。それがドリカムの純粋な音楽ではないのかというと、それも違うと思うんです。例えば、ダ・ヴィンチは教会からオーダーを受け、教会が満足する絵をたくさん描いています。しかし、そこには彼の偉大なアートが詰め込まれていて、だからこそ後世に残っている。それらはあくまでも「ダ・ヴィンチの作品」で、誰がオーダーした作品なのかは、ほとんどの人が知らないでしょう。僕らも組ませていただく企業のオーダーの必要十分条件を満たす精一杯の努力をします。しかし、その根本にあるのは、その楽曲を聴いた人に感動してもらいたいという思い。九州新幹線の場合も、JR九州さんからオーダーをいただいて作り始めたものだけれど、僕らの一番の目的は全九州のみなさんが大合唱してくれるような曲にしたいというものでした。

もちろんすべてのアーティストがこのような手法を是とするわけではないと思いますが、「企業の力を借りて素晴らしい作品を作り、それによってその企業のイメージも向上する」というのは非常に美しい流れだと思います。そんなケースが増えていくことで、音楽業界における「投資とリターンのサイクル」が再びいい具合に循環していくということもあり得るのではないでしょうか。

スポーツの世界における企業とのパートナーシップとしては、サッカー日本代表がマイナーな存在だったころから支援し続けてきたキリンという素晴らしい事例があります。スポーツも音楽も好きな自分としては、音楽業界においてもそういった取り組みが出てくると面白いのになあと思う次第です。


記事内に記載されていない参考文献など
ウォルフガング・ヒュアヴェーガー『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか』(日経BP、2013年)
「レッドブル・ミュージック・アカデミー東京」を楽しむために知っておくべき7つのこと(2014年9月6日
新たな音楽プラットフォーム、レッドブル・スタジオ 東京がオープン(2015年2月13日

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