【前編】新国立競技場騒動の虚と実 千田善( @ZenChida)×またろ( @mataroviola )

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※本記事は、アスリートナレッジにて2015年07月に掲載された記事を再編集したものです。対談収録日:2015年07月23日 聞き手:澤山大輔

アスリートナレッジ編集部の澤山です。今回から複数回に分け、イビチャ・オシム元サッカー日本代表監督通訳である千田善氏( @ZenChida)、一級建築士のまたろ氏( @mataroviola)による対談をお送りします。

対談のテーマは、「新国立競技場“騒動”の虚実」と題しました。収録時点から様々な状況が変わっており、掲載時にも幾つか修正点が出るとは思いますが、いずれにせよ共通していえるのは「騒動」であるということ、その争点を作ったのは何なのかということ。

とはいえ、あら探しや犯人探しをしても意味はありません。建築というのはまさに建設的思考であり、いかにこの状況を変えていくべきなのか? そのために、建築を学んでいない大多数の国民、とりわけ新国立競技場を使用する可能性の高いスポーツファンはどういう予備知識を持っておくべきなのか? そういった点に留意し、今回の対談を構成させていただきました。それでは、早速ご覧ください。(取材日:2015年7月22日 構成:澤山大輔[アスリートナレッジ編集部])

>>【後編】新国立競技場“騒動”の虚と実 千田善( @ZenChida 元オシム通訳)×またろ(@mataroviola 一級建築士)

■首都圏の建設物価は跳ね上がる
千田善(以下、千田) 本日はよろしくお願いします。私は立教大で非常勤でスポーツジャーナリズムを教えています。授業では「スポーツの商業化」とかいろいろテーマがあるんですけど、今年は新国立の問題を取り上げています。自分なりにネット経由で情報を集めて話をしていますが、学生にとっても他のテーマよりもすごく関心があるみたいですね。その辺の現状はどうなっているのか、どうしてこんなことになってしまったのか、そういう話を伺えたらなと思っています。

またろ よろしくお願いいたします。どうしてこうなってしまったのか、われわれも分析しきれてないところがあります。正直申しまして、首都圏の建設物価はおそらく2年後、皆さんが想像するよりもずっと高くなります。人が足りなくなるんです。特に労務関係が難しくなる。これは積み重なってきた構造的な問題で、要は仕事を辞めちゃった人が多いんです。建設といったら鳶さんが頭に浮かぶと思うんですけど、あとは土工さんと言って雑用をしたり土を掘ったりする人、コンクリートも流す人がいれば打つ人もいたりして、特に仕上げる人は技能が必要になるんです。けど、そういう人たちの年齢は60歳を超えている人が多いんですね。

そういう人たちは、様々な問題で継続が苦しくなったら辞めてしまいます。それで、どんどん職人が減っているんです。これは建設業界全体の問題です。特に震災以降、最初に火が付いたのは東北。東北の人たちは東京に出稼ぎに来るのがほとんどだったので、そもそもそんなパイがいなかった。ところが復興事業で職人の取り合いになったので、単価が一気に跳ね上がった。さらに東京オリンピック開催が決まり、アベノミクスで特にオフィスビルの需要が高まったのか供給が上がったのかはわからないところですが、建て替え需要が増えました。

加えて、日本の為替が安くなって海外の資本が入ってきて投資先を探しているような状況があります。建設ラッシュといっても差し支えない。今後、直接オリンピックとは関係ないんですが、インフラ関係の需要も高まります。オリンピックをやっているときに工事中というのは美しくないので、恐らくオリンピック前に仕上げようとするでしょう。さらに、多くのホテルが改修に入ります。これも“オリンピックのために改修しました“という形が良いので、そこまでに終わらせたい。数少ない職人たちの前に、これだけ仕事がぶらさがっているわけです。

そこで、例えば1日3万稼げる仕事があるとして、もう1つは5万円、さらに国立競技場だったら7万円、となったらもちろん国立競技場の仕事を取りますよね。けれども、国立競技場が4万だったら? まず行かないでしょう。そうすると、工期は間に合わない。当然、「それは絶対だめだ。絶対に間に合う工期でのコストを入れてくれ」となると、7万で見込むしかないわけです。間違いなく、そういう見立てをしていると思います。

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